2010/08/02

灰皿のあるベンチでタバコを片手に持ちながら唾を垂らすように吐いてる女の子を見た。唾は白かった。

今日、帰り道でそういうのを見た。ちょっと活発そうな雰囲気はあったけれど普通のかわいい女の子だった。その唾は僕が書く絵よりもずっと多くのことを発言し、エロとか倫理とかに回収されないもっといっぱいのクオリアを僕に与え、自然な不自然としてそこにあった。
そのベンチは僕の最寄り駅に隣接する商業ビルの脇に並んでいるもので、4つくらい並んでいる内の2つに灰皿が設置してある。中心街に出た帰り、いつも僕はそのベンチでタバコを吸う。帰宅の途にあるビジネスパーソンでごった返す時間帯であれば数少なくなった灰皿に愛煙家たちが群がることもあるが、僕の今の生活では時間をずらすことも容易く悠々ベンチを占領することができる。ベンチとベンチの間には、その一帯を覆う屋根を支える太い柱が立っているので、普段から僕は隣のベンチにどんな人が座っているのか気にすることもできない。今日のその彼女は、そんな中でも「今日初めて会った」という当たり前であるはずの強い印象を残した。まるで8月2日の夕方にうっすらと現れてタバコを吸い、白い唾を吐き、夕暮れと同時にうっすら消えて行く存在のように思われた。
唾を吐かなければ何も思わなかっただろう。唾が白くなければこうも思わなかったかもしれない。ペッと吐き捨てるようなら不快に思うだけだったかもしれない。だが唾は泡味を帯びて白く、確かな粘り気を持ってゆっくり垂れるように吐かれたのだ。



今日の小説口調日記。

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